せんみつ

物語を思いついたら書いていきます。

植物に囲まれて

今日も朝が来た。朝食の野菜を収穫するため外に出る。ドアを開け歩いて3分。形は良くないが、新鮮なトマトとキュウリをもぐ。

野菜が生えているのは近所のおじさんの空き地。自分だけで手入れはできないということで、近所の人たちで手入れをし、その人たちは自由に持っていけることにしている。

夏の盛りが近づいている。暑いことは暑いが、緑が多く日影もあるので少しは暑さを和らげてているような気がする。元気よく草木があちこちで茂っている。少しでも土があるところは見逃さないという勢いで、植物が生えている。

地球温暖化問題への危機感が高まる一方、二酸化炭素削減が一向に進まない状況が続いていた。思い切った手段を取る必要が迫られ、原則許可なく植物を伐採すると罰せられることになった。無許可で伐採が認められるのは、食用にする場合に限られた。

一時は雑草が生えまくり、街が荒れているように見えるようになった。雑草でも伐採は禁じられている。放っておくと木が生えることも知った。空き地は小さな雑木林になりつつあった。

生えた植物の手入れができるのは唯一食べるときだけであったので、見栄えのこともあり、土があると畑にするところが増えた。所有者だけでは手が回らず、近くの人たちが共同で管理するようになった。

自分もアパート住まいだが、おかげで新鮮な野菜を手に入れられるようになった。田舎に住んでいるわけでない。住宅密集地でも少しは空き地はある。一人で食べられる量はたかが知れているので、収穫の時期は誰でも大抵野菜に困らない。

共同で野菜の世話をしているので、近所の人たちとも親しくなった。周りが顔見知りばかりになり、治安も良くなったような気がする。

アパートに戻る。アパートの壁には蔦が広がってきている。植物の力は偉大だ。

最近ふと不安を感じるときがある。蔦が窓を塞いだらどうしよう。伐採できないから窓を開けられなくなってしまう。

窓ぐらいならまだいいのかもしれない。どんどん成長していくとどうなるのか。

考えたくないことは置いておこう。まずはキュウリとトマトだ。やはり新鮮な野菜は美味い。