せんみつ

物語を思いついたら書いていきます。

大きな政府と小さな政府

税金の選択が可能となった。

政府の中で大激論があったのだ。負担が大きくても良いから安心できる行政サービスを求める、いわゆる大きな政府を目指す意見と、行政サービスは最低限で負担も減らすべき、いわゆる小さな政府を目指すべきという意見が対立し、どちらにするかまとまらなくなったことから、選択性が導入されたのだ。

国民は所得税や消費税の税率を選ぶことになった。

税金を安くすると福祉サービスも最低限だし、災害にあっても生命の確保はしてもらえるが生活再建は面倒を見てもらえない。犯罪にあったら保護してもらったり犯人逮捕はしてもらえるが、事前の対応はよっぽどのことがないとしてもらない。

一方、税金を多く納めると、福祉サービスはもちろん、災害時の避難所も快適な場所が提供され、犯罪の予防にも積極的に応じてもらえる。

政府は、一定所得以上の人たちは高い税率を選択すると予想していたようだ。政府の財政赤字が膨大であるため、その解決策となることを期待していたようだ。

ところが結果は、高所得者も含め、大半の国民が低い税率を選択した。

所得が低い人は、生活に余裕が無いため、高い税率を選択することなどできなかった。

所得が高い人は、政府を信用していなかった。快適なサービスを受けたいなら、民間サービスのほうが質の良いサービスを提供すると考えており、事実そうした。

政府の収入は減り、行政サービスを減らさなければならなくなった。国は小さな政府に舵を切るしかなかった。

それから数年が経つ。国民生活の質が落ちることは無かった。

民間サービスは充実し、経済にも好影響を与えた。そして何より、行政サービスに無駄が多かったことが明らかになっただけであった。