せんみつ

物語を思いついたら書いていきます。

基本的人権の除外

憲法が改正された。

 

改正前の条文は次のとおり。

「全ての国民の基本的人権を保障する」

 

改正後は次のとおり。

「王族を除く、全ての国民の基本的人権を保障する」

 

改正の原因は、王族が減っていき、このままでは絶滅する可能性が出てきたことだ。

一時は王族を絶滅危惧種に指定しようとの動きもあったが、血統の存続の決定打とはならないとの理由から見送られた。

王族が減ったのは、王族たるもの、配偶者はそれに見合う者であるべきとの圧力が一つの原因であった。このため、王族の結婚は慎重に慎重を重ねることになり、ある程度の年齢でしか結婚ができず、必然的に生まれてくる子供が減ってきた。

また、様々な理由により王族を離れる方が増えたことも原因であった。どうしても好きな相手と結婚したい、好きな仕事をしたい、もう人前には出たくないなどの理由で王族を離れていった。

王族に対する国民の目は厳しい。税金で生活しているのだからと、かなり厳しい意見が国民から出るときもあった。

王族を離れた方の一人は、記者会見で怒りをぶちまけたこともあった。

「税金で生きているくせにという声は聞こえている。けれども国民の多くも、税金で守られているではないか。警察も軍隊も税金で賄われている。国民が安心して暮らすことができるのは税金のおかげだ。毎日歩いている道路も税金で作られ維持されている。その他の社会インフラもそうだ。まるで王族だけが税金の恩恵を受けているように言うが、我々を批判する人々も同類ではないか。」

そんなこんなで王族は減っていった。そして血統の維持のため、残された王族は基本的人権を失うこととなった。血統の維持が目的だから、本人の意思に関係なく、子供をつくることを強制しても問題ない。

当然ながら、子供は一人でつくることはできない。このため、憲法には次の条文も追加された。

「王族の配偶者となることを指名された者は、その時点で基本的人権を失う」